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東京高等裁判所 昭和35年(ネ)1946号 判決 1968年6月28日

控訴人・付帯被控訴人(被告)

シ・アイ・ラーナー・カンパニーこと

カーテイス・アイラ・ラーナー

代理人

妹尾晃

外三名

被控訴人・付帯控訴人(原告)

バグワンジ・エンド・カンパニー

代理人

森喬

外二名

主文

原判決中控訴人勝訴の部分を除きその余をとりけす。

被控訴人の請求ならびに付帯控訴を棄却する。

訴訟費用は付帯控訴の分も含めて第一、二審とも被控訴人の負担とする。

この判決に対する上訴のための附加期間を九〇日とする。

事実

控訴代理人は第一次的に「原判決をとりけす。被控訴人の訴を却下する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を、予備的に主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求め、さらに付帯控訴として第一次的に「原判決中被控訴人勝訴の部分を除きその余をとりけす。控訴人は被控訴人に対し英貨四〇九一磅二志及び邦貨金一八万三六〇三円ならびにみぎ各金員に対する昭和三一年七月一四日から支払いずみにいたるまで年六分の割合による金員を支払うべし。訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。」との判決を、第二次的に「原判決中被控訴人勝訴の部分を除きその余をとりけす。控訴人は被控訴人に対し英貨三七〇五磅一二志八片及び邦貨金一八万三六〇三円ならびにみぎ各金員に対する昭和三一年七月一四日から支払いずみにいたるまで年六分の割合による金員を支払うべし。訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。」との判決を求めた。<中略>当事者双方の事実上の主張・証拠の提出・援用・認否《省略》

理由

第一、控訴人の本案前の抗弁について、(被控訴人の当事者能力について)

作成名義・方式等からみていずれも真正に成立したと認められる甲第二号証の一ないし五、第三、第四号証、成立に争いのない同第二二号証の各記載によると、被控訴人はケニヤに施行されているパートナーシップ令(一九三四年七月一日付パートナーシップ法を宣言する律令)に基づいて設立され、かつケニヤの事業名登記令に則りフアーム(商会)として登記されている「パートナーシップ」であつて、ソムチャンド・メグジおよびレイチャンド・メグジの両名を構成員としてナイロビ市デイアン・バザー通に本店を有しているものであることが認められ、みぎ「パートナーシップ」はケニヤの法令上法人格を認められているものではないが、訴訟上の当事者能力を与えられているものであることはあきらかであつて、この認定をうごかすにたりる証拠はない。

かような外国の法令により設立された「パートナーシップ」がわが国において民事訴訟を遂行するにつき当事者能力を有するか否かは一の国際民事訴訟法上の問題である。わが国際民事訴訟法上当事者能力については外国人の訴訟能力に関する民事訴訟法第五一条のような規定がないから条理に従つて決すべきである。おもうに、司法作用は国家権力の発動であるから、民事訴訟については原則として訴訟の行われる地の法律すなわち法廷地法を適用すべきであり、当事者能力も一の民事訴訟上の概念であるから法廷地法によるべきである。したがつて本件における当事者能力の準拠法は法廷地法たるわが民事訴訟法であると解するを相当とする。

そこで、被控訴人がわが民事訴訟法上当事者能力を有するかどうかを検討するに、前顕各証拠および日本国領事の認証部分の成立について争いがないので全部真正に成立したと認める甲第五号証の記載をあわせると、被控訴人は前認定の構成員個人と別個の財産を有し、規約上代表権を持つ各構成員によつて代表されて商業活動を行つている商会であることが認められ、これと前段認定の事実をあわせると、被控訴人は代表権の定めのある人格なき社団であると解せられるから、わが民事訴訟法第四六条によつて当事者能力を有するものということができる。したがつて控訴人の本案前の抗弁は理由がない。

第二、本案の請求にたいする判断《省略》(満田文彦 高津環 弓削孟)

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